一生回復しないことの影響はあまりに甚大
新型コロナウイルス感染症の典型的な症状の1つに嗅覚の低下がある。これが最初の症状となる患者もいれば、唯一の症状となる患者もいる。そうした患者では、あたかもスイッチがパチンと切り替わったようにいきなり嗅覚が消え、多くの場合は味覚も失われる。
たいていの患者は通常、数週間以内に回復し、嗅覚と味覚を取り戻す。が、嗅覚と味覚が失われたままとなる患者も一部には存在する。これらの感覚がいつ戻るのか、そもそも戻るのかどうかは医師にもわからない。
新型コロナが持続的な嗅覚消失を引き起こす仕組みや治療法はほとんどわかっていない。しかし感染者は世界中で増えているため、専門家の中には、パンデミックで永遠に嗅覚や味覚を失う人が大量に出てくることを危惧する声がある。
本当の恐ろしさが理解されていない
においは味と食欲の双方と密接につながっており、嗅覚が失われるとたいていは食事の楽しみも奪われる。しかも、嗅覚が突然消失すると精神面や生活の質にも深刻な影響が出るおそれがある。
各種研究によると、嗅覚消失は社会的な孤立感や、喜びを感じられなくなる無快感症(アンヘドニア=うつなどの中心的症状の1つ)と関係している。記憶や感情はにおいと密接につながっており、嗅覚系は精神面の健康に重要な役割を果たしているが、この点はあまり認識されていないとハーバード大学医学大学院のサンディープ・ロバート・ダッタ准教授(神経生物学)は話す。
フェイスブックで活動する、ある支援グループに参加する新型コロナ患者9000人の経験をイギリスの研究者チームが調査したところ、多くのメンバーが食事の楽しみだけでなく、社交の楽しみも失ったと述べていた。そのせいで他者との絆が弱まり、孤立感が高まり、現実から切り離されたとすら感じるようになったという。
「公衆衛生の観点からすれば、極めて重大な問題だ」とダッタ氏。「全世界の新型コロナ感染者数を考えれば、嗅覚の消失が長引く人の割合がたとえ10%だったとしても、その人数は数百万人に達する可能性がある」。
栄養失調や体重減少の懸念も
中でも栄養摂取には直接的な影響が及ぶとみられる。嗅覚を失った人でも、辛い、甘いといった基礎的な味はそれまでどおりに感じられる可能性はある。ただ、風味に複雑さを加えているのはにおいだ。味覚は何百という嗅覚受容体が脳に信号を送ることで成立している。
つまり、においを感じ取れなくなると、多くの人は食欲を失い、栄養失調に陥ったり、意図に反して体重が減少したりする危険性が高まる。
嗅覚は、ガス漏れなど周囲の危険を察知する主要な警報システムとしての役割も担っている。例えば、高齢者が調理中の食べ物をコンロの上に放置して火事を起こしやすいのも、加齢による嗅覚の低下が一因だ。
嗅覚がなくなるだけでも大ごとだが、新型コロナから回復した人の中には、プラスチックの焼けるにおい、アンモニア臭、排泄物のにおいといった極めて不快な幻臭に悩まされる人もいる。嗅覚錯誤と呼ばれるゆがみだ。
カリフォルニア州サンタマリアで保護観察官をしているエリック・レノルズさん(51)は4月、新型コロナに感染して嗅覚を失った。
現在は、存在しないはずの悪臭を感じることが多いという。ダイエット飲料は汚物のようなにおい、せっけんや洗濯用洗剤はよどんだ水かアンモニアのようなにおいがするそうだ。「皿洗いはできない。吐きそうになる」とレノルズさん。
「何を食べてもガソリンみたいな味やにおい」
バージニア・コモンウェルス大学嗅覚・味覚障害センターのメディカルディレクター、エヴァン・ライター教授によれば、レノルズさんのような患者が知覚のゆがみから食物嫌悪症を発症するのは珍しいことではない。ライター氏はこれまでに、嗅覚を失った2000人のコロナ患者の回復過程を追跡している。
同氏の患者の1人は回復途上にあるが、「何を食べても、ほとんどがガソリンみたいな味やにおいがすると話している」(ライター氏)。
嗅覚を失うと「サブタイプを含めた受容体の集団がそれぞれに違った影響を受ける可能性がある。そのせいで、例えばステーキを食べる際に脳がいつも受け取っていた信号がゆがめられ、脳は犬の糞だとか、何かとても不快なものを食べていると錯覚させられるのかもしれない」とライター氏は話す。
(執筆:Roni Caryn Rabin記者)
https://toyokeizai.net/articles/-/401593
(C)2021 The New York Times News Services
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Twitterの反応
コロナと嗅覚・味覚異常の関係は、まだはっきりとした裏付けができていないものの、複数の体験が上がってきてるなら見過ごせない。
— あのにむ (@s_gimonn) January 9, 2021
嗅覚・味覚を失うと、食欲が減退して免疫力が落ちる可能性がある。腐った食べ物を判断しにくくなるかも。また、火事などの危険を察知する能力も下がるはず。
コロナ陽性でした。
— きりん (@QJWJFf6AJN6Uiqn) January 9, 2021
発熱が治まって2日後にパチンと味覚嗅覚が消えました。5日後には少し戻ってきましたが、未だに嗅覚は7割戻ったか戻ってないかぐらい。
本当にパチンと消えてたから不思議。
発熱時に少し鼻づまりがあり、食事の際に味が分かりにくかったですが、まだ味覚嗅覚がありました。
— きりん (@QJWJFf6AJN6Uiqn) January 9, 2021
そこから2日後ぐらいにいきなり、あれ…味が全然しない…っていうぐらいいきなり飛びました。
味覚嗅覚の後遺症についてもっと報道されて欲しいものです🥲
私の周りで2人の方も完全には味覚嗅覚が治っていないと聞きました。
— きりん (@QJWJFf6AJN6Uiqn) January 9, 2021
若い人は重症化しにくいですが、後遺症が残る可能性は十分にあります。
対策しながら仕事し普通に生活してただけなのにこうなりました。
皆さんも十二分にお気をつけ下さい🥲
嗅覚、味覚異常を軽く捉えている中若年にしっかり知らせて、感染防止のための行動変容を訴える必要がある。家族内の高齢者への感染防止にも繋がるはず。政府官僚のプライド回復が一番の課題でもあるでしょうが。人事で官僚を思いのままにしょうとしてきた『お釣』をはらうのは政治家❗️国民を守りつつ。
— イソギク (@GONQVLkGfAiVHeO) January 9, 2021
子供からの家庭内感染でコロナに罹った者です😷 🌡私の場合は発熱と咳が先でしたが、嗅覚の消失は発症から6日目でした👃🚫 幸い軽症のまま乗り切り、21日目にして ようやく少しニオイが分かるようになりましたが、これが後遺症として ずっと残るとしたら恐怖です😢https://t.co/wByxCChZJb
— kazzen (@kazzen) January 9, 2021
嗅覚異常はつわりで初めて経験しました。嗅覚が鋭敏になりすぎたパターンですが、食の楽しみはもとより食欲は皆無、飲食店や家の水回りにも安易に近寄れず、魚やイカの匂いを嗅いだだけで嘔吐、体重減少。この状態がいつまで続くかわからない苦しさ。嗅覚が正常に働かないのは本当に怖いです。
— mimi@初マタ🐘22w (@mimi6w1) January 9, 2021
美味しいものを食べることが好きだから、味覚嗅覚が無くなってしまうと今後の人生の楽しみが半減しちゃうよ…😭
— りんどう🌿 (@EbyZ4VwkcB89KAx) January 9, 2021
まだまだ十数年は子どもたちにご飯を作ってあげるし…味がわからなかったら日々の料理にも苦戦する…
コロナを体験したワイから言える事
— えぐ (@exely5) January 7, 2021
○味覚・嗅覚障害は本当に最悪
後遺症で治らない可能性アリ
○肺が弱くなる
喋るのも辛く呼吸をしても酸素を取り込めてない
○高熱⇄平熱を繰り返す
夜は地獄
○常に筋肉痛、頭痛、下痢
病床空いてません
隔離ホテルに行っても何も治療無いから症状重いと死ぬ笑
わいは味覚障害の経験者だけど、あれはほんと辛い。全てが別物の味になってしまって、アイスも水も苦く感じた時は絶望したな。
— オロナミンスン (@jeGFEFUz4bgO9Nu) January 9, 2021
食べる事が苦痛で、でも食べないわけにいかずただ義務的に食べ物を胃に入れてたあの経験はもう絶対にしたくない
編集部より

hidesuke
こういった記事をみると必ず脊髄反射のように『煽り記事』だと書いている人がいますけど、自分や身近な人が感染したり、後遺症で苦悩していても同じことをいえるのでしょうか?
他人事と切り捨てるのか、我が事としてとらえられるかで、
私はその人の人間性が判断できると思っています。
正しい知識を身につけ、正しく恐れる。自分も他人も守る。
とても大切なことだと思っています。
無知は罪です。
そして知ろうとしないのはもっと悪い。怠惰じゃないですか?
お医者さんがわかりやすく説明してくれる動画を貼っておくので、
是非一度、勉強してみてくださいね。